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最終更新03/01/10


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(最近鑑賞した作品の感想他)

スパイダーマン ヴィドック おせん


■マンガ■おせん(講談社モーニングKC) きくち正太

 きくち正太の絵は、細部まで神経を使ったスタイリッシュな画風なのに、どこか昔の「劇画」雑誌に載っていたような泥臭さも感じさせる。まあ、取っつきにくいと言ってよい作風だろう(それにしてもこれだけ手間がかかってると、作中人物同様に割に合わない職人仕事をしてるんだろうなあ)。過剰な日本趣味とうんちくに耐えられるかどうかが分かれ目。
 それはともかく、そこここに浮世絵の美人画のオマージュが見受けられ、作者がマンガを現代の浮世絵として位置づけていることがよくわかる。
 しかし、ここにもう一つ何かがないと、傑作になり損ねるような気もするのだが。マンガの世界での美人画は、すでに江口寿史が一つの頂点を築いてしまっているし、きくち正太には、ひとつ北斎や写楽のような強烈なアクが(うるさくない程度に)出てくることを期待したいところだ。

■映画■ヴィドック(2001.フランス) ピトフ監督

 ある意味で衝撃的。なぜならフランス映画の匂いがしないから。ゴシックホラーの現代的解釈というテーマは、コッポラの「ドラキュラ」、ケネス・ブラナーの「フランケンシュタイン」が先駆で、かなりそこに引きつけられていると言ってよいかも。
 CGの多用、書き割りのようなチープな背景、凝ったセットと小道具、小汚い人物。ストーリーを含めて、極めて作り物めいた舞台。しかしその前に立つ役者は変に生々しい。
 なんにせよ。「映画は絵だね」というのは、ずっと昔、SFマガジンかなんかのエッセイで読んだ言葉だが、それは実にその通りで、他のどんな要素がくだらなかろうが、絵を見せるんだという意気込みで作られた(というか、お前に解るか?と挑戦されているような)映画は、それだけでOKなのである。だって映画なのだから。・・・もう一回見る気は起きないけど。
■映画■スパイダーマン(2002.米.コロンビア)
サム・ライミ監督 トビー・マグワイア、ウィレム・デフォー他

 はたしてこの映画が9.11の前に出来たのか、後だったのか、そこに微妙な問題があるような気がする。キーワードは「強い力を持つ者は特別な義務を負う」。このナレーションかぶって、ラストシーンはニューヨークの摩天楼の上にたなびく星条旗にしがみつきながら、恋する女の愛を振り切った悲壮な決意のスパイダーマンのアップ。
 力の強いアメリカ帝国主義は、人から理解されず、嫌われながらも、特別で神聖な義務として正義を遂行せねばならぬ、というわけである。
 しかも、この映画が中流以下のアメリカ白人をヒーローとすることで、露骨に白人優位を表明しているところも気になるところ。ここまで有色人種が出てこないアメリカ映画も、最近珍しいくらい。
 バットマンは国家のために汚い仕事を引き受けたダークヒーローだが、その代わりいつも暗い闇の中に生きる。それに対して、スパイダーマンは個人のレベルで差別と劣等感に悩むヒーローだったのでは?健全すぎる青春物のスパイダーマンは、ちょっとねえ、である。

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