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2007年短歌集


賢さん

ケンさんと呼ばれる国語教師あり健さんの背中で獅子吼えしころ

登り切る丘の上なる川高は九の不潔と一の高潔

一年に過ぎねど教え給いたる丸顔眼鏡の諏訪山のぬし

賢さんと言えばコロンの匂いなりダンディと言うに少し過ぎしか

賢さんの活用カッパカッピカップカップカッペカッペ

授業中芝居の話に脱すれば教師は左右田一平が良いと

「男子校が気楽で好きだ」と言いし師よ世はジェンダーが問われる世へと

平明で静かにあれど怒りあり遺歌集に読む賢さんの歌も

師の年譜開けば生年享年が父に近かり句を捨てし父

今日もまたイラクで多数の死者ありと 賢さんの憂いが漂い続ける

仏花さえ購い難き身にあれば弔歌十首をポストに託す


禁断の恋

三日月の刃はヌメるごと光りいて星すべからく傅(かしず)かせなむ

枯れざれば組木細工の嵌(はま)るべき箇所はあれども反り返りいて

浴槽にさやさやと波たてながら入浴剤溶け×××の欲情

空を飛び来たる想いをケイタイに受ければこれも空想と謂うか

壊れゆく心うれしも壊れざる世界に小さき反逆として

「禁断」を辞書にて引けばほろほろと「禁断症状」「禁断の木の実」

一生を捨てるにあたう一夜あらば生きる力となるや一世を

「浮気じゃない、これは本気」とドラマなら叫んでエンドマークが出るも


1なれば

桜咲き桜は散れどにんげんは根もなく咲かず散ることもなく

雪原に鹿立つ壁紙貼りきしが桜の画像を検索してみむ

パソコンに桜の壁紙貼ってみる本当の桜はまだ見ていない

電飾の無き裏道に街路樹が太古の森の声をささやく

久々に並びて歩く家までを父は優しも夢の中にて

介護という愛の機会もくれなくて淡泊だったよほんとに父は

夏の沼目をこらせども青い鳥探す力さえ格差があって

報われぬ恋に消えにし人魚姫の像は幾度も破壊されりと

青天に猛禽一羽とどまりて塵舞う地上の人と隔たる

1なれば何も引かれず多く持つ人はそれだけ孤絶のあらむ

群れることに倦みて一線引きたしとぼんやりすれば伸びるラーメン

冬のなき春を迎える温暖化人なき広場に電飾揺れぬ



いまのまさし 2007