旧 創作工房 10〜20発言
- 詩「小径(こみち)」 ゆきだるま 102年 6月 1日(土)08時26分43秒
- 詩 「 家 」 ゆきだるま 102年 2月15日(金)04時10分57秒
- 小説:『蛍二朗、弥生の風に震える』(論可) Junk-bubu-oh 102年 2月13日(水)20時41分28秒
- 小説:『オヤジの魔法使い』(論可) Junk-bubu-oh 102年 2月13日(水)20時40分03秒
- 小説:『認識論的存在論・要旨』(論可) Junk-Oh 100年10月14日(土)22時11分07秒
- 小説:『日本英雄伝』(論可) Junk-Oh 100年10月14日(土)22時05分08秒
- ゆきだるまの短歌集 ゆきだるま 100年10月14日(土)00時01分22秒
- 詩 : 『柿』 ゆきだるま 100年 9月 8日(金)05時02分34秒
- 訂正 Junk-Oh 100年 6月11日(日)20時51分04秒
- 短歌:『あいに』 Junk-Oh 100年 6月 4日(日)23時41分19秒
- 詩「小径(こみち)」
- ゆきだるま
- 記録番号:00000020
- 記録日時:102年 6月 1日(土)08時26分43秒
「小径(こみち)」
私の好きな 秋小径
あったかにして お散歩ね
木の実ついばむ 鳥さんや
おやすみしている 虫さんを
邪魔しちゃっては かわいそう
静かにそっと 歩きましょ
並木彩る 秋小径
まだまだ落ちない 木の葉たち
まわりはみんな 秋の色
秋風そよそよ 吹くたびに
葉っぱがさわさわ 音を出し
そしてふわふわ 降ってくる
きれいな落ち葉の 秋小径
わたしがそっと 歩くたび
葉っぱがかさかさ 鳴りました
そしたら急に 切なくて
それになぜだか さみしくて
秋風しんしん 染みました
ひっそり静かな 秋小径
お手々もすっかり 冷えました
ほんとはまだまだ 居たいけど
そろそろおうちに 帰ります
明日もきっと 来るからね
私の好きな 秋小径
2002/06/01 ゆきだるま
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- 詩 「 家 」
- ゆきだるま
- 記録番号:00000019
- 記録日時:102年 2月15日(金)04時10分57秒
「 家 」
僕が住んでた 元の家(うち)
久しぶりに 見に行った
家から漏れる 窓明かり
微かに聞こえる 笑い声
そしたらなんだか むなしくて
昔を想い せつなくて
私が住んでた 前の家(うち)
今はどうかと 見に行った
窓から覗く 人の影
外まで響く 怒鳴り声
そしたらなんだか かなしくて
想い躙られ くやしくて
2002/02/13 ゆきだるま
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- 小説:『蛍二朗、弥生の風に震える』(論可)
- Junk-bubu-oh
- 記録番号:00000018
- 記録日時:102年 2月13日(水)20時41分28秒
*論可*
〜一魂堂人形秘話〜
蛍二朗、弥生の風に震える
いまのまさし
のんびりとした物売りの声が響いてきた。どこかの路地で子供たちが遊び騒ぐ声も風に
運ばれてきた。しかし、直造の耳にはもう何も聞こえていなかった。神経は鑿の先に集中
していたのだ。
ふと気づくと隣間で恵の動く気配がした。
「すまねえ。起こしちまったか? ラジオでもかけようか。」
「ううん、いいの。あたし、あんたの鑿の音を聞いていると、なんだか気持ちがせいせい
するんだもの。……アイはどうしたの?」
「ああ、さっきちょっとグズりはじめたもんで、隣のおばさんに見てもらってる。さすが
に八人もガキ育てただけあって、子供の扱いに慣れてらぁ。アイもこんとこ、すっかりな
ついてるよ。」
恵が少し寂しそうな顔をしたが、ほの暗い部屋の中で、直造にはよく見えなかった。
「それはそうと、表通りの町田先生。なんでも独逸の薬でとても効くのあるんだそうだ。
今探してくれてるから、お前ももうちっとの辛抱だぜ。」
「だめよ! そんなの! やめて……」
恵がもがくようにして布団から起きあがろうとしたので、直造はあわてて駆け寄り、恵
の上体を抱きとめた。
「おい、無理しちゃいけねえ。」
「あたしはもう長くない。それは自分が一番よく知ってるの。ねえ、お願いだから、あた
しの薬に使うお金があったら、アイのために少しでも蓄えに回してちょうだい。お願い…
…」
「わかった。わかったから、横になんな。」
「あたし幸せだったわ。あんたと夫婦になれて、アイという娘にも恵まれたし。……そう
だ、あたしの化粧箱の中にあの簪が入ってるの。」
「なに?」
「ほら、あんたに初めて買ってもらった簪よ。ほんとにあの時はうれしかったわ。あたし
ね、いつかあれをアイにやろうと思ってた。あたしが死んだらあの子にやって。あたしの
体は無くなっても、あたしの気持ちが残ってあの子を守れる気がする。……せめてアイが
あの簪を挿すとこを見てみたかったなぁ。」
「お恵。」
直造は、おもわず妻の手を握りしめた。
「ごめんくださーい。」
さすがに都内有数の超高級高層マンションだった。
珠緒の心配は全く無用で、エントランスホールはもちろん、エレベーターの中も廊下も、
入り口ドアも、らくらく三人の大人と二つの大荷物を通すくらいに広かった。
しかしそれにも増して、竹中夫人に通されたリビングがすごかった。
作業服の男二人に荷物を解かせている間、珠緒は半ば呆然として室内を見回した。今日
は、ちょっと丈の短いスカートのスーツを着てきたのだが、ジーパンにしなくて正解だっ
たと思った。もっとも、はた目から見たら、リクルート中の女子学生にしか見えなかった
が。
二方に大きく開いた窓からは、ごちゃごちゃした東京の町並みが遙か下方に消え、太平
洋さえすぐ間近に見えた。このリビングの広さだけでも、佐藤一魂堂の事務所兼工房兼従
業員宿舎であるボロマンションの3LDKがすっぽり入って、まだ余裕があるのではない
かと思われた。
億は間違いないが、二億?三億?。
それだけあったら、と珠緒は想像した。借金を返して、蛍二朗をクビにし、営業車を買
って……。
「どうかしましたか?」
不審に思った竹中夫人が声をかけた。
「い、いえ。な、な、なんでもありませんことよ、オホホ。……そ、それにしても、すて
きなおうちですねぇ。」
「でもねえ、四月で娘も小学校だし、ちょっと手狭かなという気がして。主人にもっと広
いところはないか、探してもらっているところなんですのよ。」
珠緒は頭の後ろに大きな汗マーク。
夫人が席を外すと、作業服のうちの中年男が、珠緒の前に来てにらみつけた。
「おい、ちっとでも手伝おうって気がねぇのか。」
「当然でしょ。わたしは経営者、あんたは従業員なんですからね。」
「なーにを! おれは職人だい。」
若い作業服の男が手を休めないまま、振り返って叫んだ。
「もお、蛍二朗さんも珠緒ちゃんも、急いでくださいよ。俺も次の仕事入ってんだから。」
珠緒と蛍二朗の目の間に火花が散った。
一魂堂は江戸時代から続く人形店の老舗だったが、時代の流れには勝てず、珠緒の父で
ある先代が死んだ時には、何人かいた人形職人も雪蛍二朗ひとりになっており、経営も、
副業で始めた玩具店の収益に頼っているありさまだった。
そんなわけで、今回の竹中家の「豪華二十段・手作り雛飾り大セット」はひさしぶりの
大仕事だったのである。
珠緒にとってもこれだけの仕事は初めてだったが、蛍二朗にしても自分の腕を存分に振
るえるとあって、本心はうれしくて仕方ないのだった。
とは言え、人件費を極力浮かせたい事情では、搬入と飾り付けにも、赤帽の満男ひとり
を頼んだだけで、珠緒と蛍二朗がみずから出向いてきたのだった。
「本当にきれい! やっぱり一魂堂さんにお願いして良かったわ。」
リビングの一角に雛人形を飾り付け終わると、竹中夫人は一行をダイニングに呼んで、
紅茶とケーキを振る舞った。
「実は私の母方のひいおじいさんも人形師だったらしいんだけど。戦争でみんな焼けちゃ
ったそうで何も残ってないんですよ。私のおばあちゃんが死ぬ前にくれた変な人形だけ…
…、そうだ、一魂堂さん、ちょっと見てもらえません?」
夫人は食器棚の上に載せてあったポリ袋を降ろした。
透明の袋の中には、見るからに古びた人形が入っていた。
「こんな汚いんで捨てようかとも思ったんですけど、お人形っていうのは捨てづらくて。
それに、もしかしたらひょっとして珍しい、価値のあるものかもしれない、なんてね。」
人形を受け取った珠緒は、隣の蛍二朗に手渡す。
「確かに、こんな人形は見たことないが。」
それは三十センチに満たない粗末な人形だった。
抱き人形の一種なのだろうが、手も足もついていない、いわばこけしスタイルだった。
胴体に柄模様の布きれを何枚か巻き付けて着物に見立てていた。
珍しいのはその頭で、ガラスか石の球で出来ているようで色は肌色というよりは赤に近
い。そこに目と口が描き込まれている。しかし胴体に比べるとその大きさはずいぶんと小
さかった。
頭の上には島田を模した髪が載せられていたが、明らかに何度もはがれては付けなおし
た跡が残っていた。
「うーん、これは。」
と、蛍二朗がうなったのは、もちろん、こんな二束三文には値段も付かない、という意
味だったが、夫人は違う意味にとったようで、瞳を輝かせた。
蛍二朗が口を開く前に、珠緒があわてて言った。
「奥様。ちょうど良かったですわ。一魂堂ではただいま『古人形お宝鑑定+修理サービス・
キャンペーン』の期間中ですの。通常の半額で承らせていただきます。このお人形はさっ
そくお預かりしますわね!」
よくもまあ、とっさの時にこんなデタラメを並べられるものだと、蛍二朗はあらためて
この小娘にあきれ果てるのだった。
目覚めると、蛍二朗は、頭の芯と胃袋の奥に、鈍いしびれというか重苦しさを感じた。
頭を少し上げると、くらくらとめまいがした。
「あたたた。」
毎度おなじみの感覚だった。
昨日は打ち上げと称して、ひとりで行きつけのスナックや飲み屋をハシゴして回り、ど
うやってボロマンションの二階の部屋へ帰ってきたのか記憶がない。
決意を固めてもぞもぞ起きあがると、水を求めてダイニングキッチンへ這うようにして
向かう。
するとテーブルの上に、例の抱き人形とメモ紙が置いてあった。
〈社長命令。雪従業員殿。人形の鑑定書を本日中に作成すること。(出来てなかったら減
給するからね!)〉
ますます胸が悪くなった。
人形をひっつかむと、ふらふらと洗面台に向かった。
洗面台の窓に人形を置くと、蛇口をいっぱいに開けて、ザフザブと顔を洗う。
すると、今度はかなり激しいめまいがした。
「おっと。」
いや違う。部屋の中までカタカタとものが揺れる音がしている。地震だ。
と、目の前においてあった人形がパタリと倒れた。それは、ころりと回転すると、すと
んと窓の外に落ちていった。
「お、おーい。」
あわてて狭い窓からむりやり下をのぞくと、人形は一階のひさしの上に落ちている。
急いでジャージの上下を身につけて、階下へ走った。
管理室で脚立を借りると、隣のビルとの間の狭い路地に脚立を立てる。ひさしの上に顔
を出して人形を見つけることは出来たが、手を伸ばしても、もう少しで届かなかった。何
か棒のようなものを持ってこないと、と思ったとき、目の前にばさばさと一羽のカラスが
降り立った。
おもわずのけぞる。
ところが、カラスはなにを思ったか、人形をくわえると、また、ばさばさ飛び立ったの
である。
「ちょっとぉ!」
脚立から飛び降りると、カラスを目で追いながら走った。
さすがにカラスには重たいようで、ふらふらと力無く飛んでいくので、なんとか見失わ
ずにはすみそうだった。ところが、カラスが向かったのは大通りだった。
通りはいつもながら車であふれかえっていた。カラスは蛍二朗をからかうように車の上
を横切っていった。蛍二朗の足が止まった。
いや、しかし。
一度高度を上げたカラスだったが、再びガクリと落ちてきて、その拍子にくわえた人形
を落としてしまった。
蛍二朗の目が人形を追う。すると、人形は信号待ちしていた一台の車の上にポトンと落
ちた。
「その車、待ってくれー。」
蛍二朗がダッシュしようとしたとき、車が次々動き始めた。
文字通り、春は名のみの風の寒さだった。もう日も暮れようとしていた。
どこともしれない小さな公園のベンチで、蛍二朗は薄いジャージ一枚で震えながら、手
に持った人形に語りかけていた。その姿は、見ようによっては完全に「変質者」だったが。
「まったく、ずいぶん走らさせてくれたよなぁ。ま、おかげで酒はすっかり抜けたけどな。」
幸か不幸だったのかわからないが、道路が適度に渋滞していたおかげで、走って走って
追いかけて、やっとのことで人形を乗せた車に追いつくことが出来たのだ。しかし、ここ
がどこだか見当がつかなくなってしまった。
と、ふと顔を上げると、目の前に見覚えのあるビルがあることに気がついた。
「おまえ、まさか。」
竹中家が入っている超高級高層マンション。
「自分の家に帰ろうとしたのか? そうか……。わかった大丈夫だ。帰してやるよ。でも
その前に、ずいぶん汚れちまったろ? 俺のところでちょっと化粧直ししてから帰ろうぜ、
どうだ?」
人形がにっこりほほえんだように、蛍二朗には見えた。
「申し訳ありませんが、この人形に値段は付けられません。」
珠緒に無理やり着せられた慣れないスーツ姿の蛍二朗が言った。
「そう、やっぱりね。」
リビングのソファに寄りかかりながら、竹中夫人はいかにもがっかりした様子だった。
「いえ、そういう意味ではないんで。というか、この人形は奥さんが持っておられないと
意味がないものですから。」
「それはどういう?」
「昨日、修理がてらに、こいつを解体したんですが、こんな書き付けが出てきました。い
や、これはコピーで、本物は元通り中に入れましたが。」
竹中夫人はちょっと顔をしかめながらコピーを眺めた。
「筆書きなんで読みづらいですが、たぶん奥さんのひいおじいさんにあたる直造という職
人が、自分の娘(つまり、奥さんのおばあさんですね)のお守りとして、亡くなった妻の
形見の簪を埋め込んで人形を作った、ということが書いてあります。」
「まあ。」
「確かに、この人形の頭は簪の飾りをそのまま使っていました、珊瑚のようですが。串の
部分が胴体の芯になる形で埋め込まれています。……そういうわけで、これは特別な人形
なんです。この家以外に置いても意味ありません。」
その時、玄関チャイムが鳴って、どたどたと子供が駆け込んできた。
「あ! ケイちゃんだ!」
その女の子はリビングテーブルの上に置いてあった抱き人形を見つけると、素早く手に
取った。
「これっ! 愛香。お客さんがいらっしゃっているでしょう。ごあいさつなさい。」
「こんにちは。」
子供の後から、きりっとした若い女性が入ってきた。
「ただいま戻りました。愛香様は今日もお元気で、幼稚園でも変わったことは無かったそ
うです。卒園式のためのお遊戯をなさったとのことです。」
「ごくろうさま。明日もよろしくお願いしますね。」
夫人の言葉を待って、若い女性は部屋を出ていった。
「こちらが、お嬢さんですか。」
珠緒が訊いた。
「そうなんです。おばあちゃんから一字もらって名前を付けたんですよ。」
愛香は人形を抱きしめながら、雛飾りを見せてやっているようだった。
「この人形はケイちゃんって言うんですか。」
「なんですか。幼稚園前くらいまではこの人形が大のお気に入りで。いつの間にか勝手に
ケイちゃんって名前を付けたんですよ。しばらくほったらかしていたから忘れたのかと思
ったら、昨日幼稚園から帰ってきて急にケイちゃんがいないーってグズりまして。」
「二十一世紀の名匠、大正の名匠に会う、ってとこだな。」
「なによ、それ。」
並んで歩きながら、珠緒が蛍二朗にちゃちゃを入れた。
「俺という現代の名匠がいなかったら、直造って大正時代の名匠は埋もれたまんまだった
んだぞ。」
「どこが名匠よ。」
「おいおい。自分の家に帰ろうとするほど魂の入った人形を作ったんだぜ。」
「なーにが。だいたい、もし本当に人形が家に帰ろうとしたんだとしても、それは娘を思
うお母さんの気持ちが強かったからでしょ。人形師の力のせいじゃないわ。あーあ、あた
しは魂が入るより、お金が入る方がずっといいわー。……あ痛っ!」
突然、珠緒が頭を抱えて歩道にしゃがみ込んだ。
「ど、どうした。大丈夫か。」
「大丈夫じゃないー。鑑定料と修理代、請求するの忘れたのよおぉー!」
― 了 ―
初出「つきのまほう」42号(2001/8/27)
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- 小説:『オヤジの魔法使い』(論可)
- Junk-bubu-oh
- 記録番号:00000017
- 記録日時:102年 2月13日(水)20時40分03秒
*論可*
オヤジの魔法使い
いまのまさし
カカシが言いました。
「私は脳みそが欲しいのです。」
「おまえには、もうすでに充分な知恵があると思うがな。しかし、どうしてもというのな
ら……」
魔法使いは、フスマに釘やピンを混ぜたものをカカシの頭の中に詰め込みました。
「ありがとうございます。なんだかとても調子が良くなりました。」
「わしは、心臓が欲しいんじゃ。」
次にブリキ男が言いました。
魔法使いは、ブリキ男の胸に小さな穴をあけると、その中に、おがくずを詰めた小さな
絹の袋を入れました。
ブリキ男はたいそう喜びました。
「ぼっ、ぼくは、ゆ、勇気が欲しいです。」
ライオンが言いました。
魔法使いは、四角い緑色の瓶から、やっぱり緑色のお皿に液体をそそいで、ライオンに
飲むように命じました。
ライオンが思い切ってそれを飲み干すと、なんだかとても強くなった気持ちになりまし
た。
最後はドロシーの番でした。
「あたしはカンザスに帰りたいの。」
「なんだって?」
魔法使いが聞き返しました。
「カンザス! カンザスシティよ、あたしの故郷の!」
「はあ? ああ、わかったわかった、ちょっと待ってくれ。」
魔法使いは戸棚から、キラキラときれいに光る小さななにかを取り出して、ドロシーに
手渡しました。それはミニチュアの魔法の杖のように見えました。
「ありがとう。でも、これはどうやって使うの?」
「髪に挿してごらん。」
ドロシーは小さな杖を髪に挿しました。
「……」
「……」
「……」
「……」
「なんにも起きないじゃないのー! どーなってるのよ、コレ。」
「えっ。それで終わりじゃよ。」
「なーに言ってんだよ、このクソオヤジっ。」
「ほっほっほ。だって君は言ったろ。カンザスシティ、カンザシしてー、カンザシしたい!
ってね。ほーっほっほっほ。」
魔法使いは、エイズ薬害訴訟のアベきょうじゅそっくりの声で笑いました。
一分後は、ライオンのおなかの中にいました。
どっとはらい。
― 了 ―
(参考文献「オズの魔法使い」ライマン・フランク・ボーム/佐藤高子訳 早川書房)
初出「つきのまほう」42号(2001/8/27)
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- 小説:『認識論的存在論・要旨』(論可)
- Junk-Oh
- WWW極地
- 記録番号:00000016
- 記録日時:100年10月14日(土)22時11分07秒
2000年星街文化祭提出作品
『 認 識 論 的 存 在 論 ・ 要 旨 』
いまのまさし(Junk-Oh)
― 今日は「存在」について話しましょう。
― 「存在」ですか? 難しい話は……
― 存在とはなにか、あなた、わかりますか。
― いえ、そういう話は苦手でして。
― 存在というのはね、あなた。つまり、人間によって認識されると言う
ことです。
― はあ。
― 存在と言ったってね、そこに何かが存在しているわけではないのです。
― ??
― モノが在るというのは、まさに、モノが認識されるという意味以外で
はないのです。
― それは、ちょっと……。
― 例えばですね。これは何色に見えますか。
― 白です。
― じゃ、これは?
― それも白ですね。
― あーはっはあ。しかしこれはイヌイットにとっては違う色なのです
よ。
― イヌイット……
― いわゆる、エスキモーですな。あなた、このくらいの言葉、知ってな
いと国際社会では笑われますよ。イヌイットには、日本人が白と呼ぶ色
にも何種類もあるんですよ。これを日本に置き換えれば、たとえば雨の
呼び方ですな。小雨、霧雨、土砂降り、小糠雨、五月雨、わたあめ、べ
っこうあめ、キャラメル、キャンデー……
― あの。
― いやいや、あっはっはー。ジョークですよ、ジョーク。ジョーク、わ
からないと、国際社会で笑い者ですよ。……なんの話だっけ? あ、そ
うそう。だからね、よその国には、こんなに雨の区別はないでしょう。
みんな同じ雨にしか感じないのよ、ガイジンは。ね、つまり、ガイジン
にとっては霧雨も小糠雨も存在しないわけですよ。あなたにとって、白
色が一色しか存在しないのと同じようにね。
― うーん。わかったような、わからないような。
― 君も、また理解力が低いなあ。
― 詭弁じゃないんですか?
― なんだと! おまえのボケナス頭じゃ認識できることが少なすぎて、
脳味噌そのものが存在してないんだよ。スカスカ頭がっ!
― あ、いやいや、よーくわかりました。教えてくれて本当にありがと
う。……ところで、私、実はあなたに保険を掛けているのです。
― なに?
― しかし、いざとなると殺すに忍びない。ずっと、ためらっていたんで
すがね。でも、今の話を聞いて大変安心しました。
― 君、ちょっと。
― なぜならあなたに死はあり得ないからです。
― あっ、ぐうう。
― 認識できないものは、存在しないんでしょう?
― うっうっうっ・・・・
― ということは、自分が死んだ瞬間には、自分が死んだことをすでに認
識できなくなっているのですから、あなたの説によれば、あなたに認識
できないあなたの死は存在しないのです。そうですよね?
― ・・・・
― 本当に、為になりましたよ。ありがとう。
了
(「月の魔法」39号掲載予定)
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- 小説:『日本英雄伝』(論可)
- Junk-Oh
- WWW極地
- 記録番号:00000015
- 記録日時:100年10月14日(土)22時05分08秒
2000年星街文化祭提出作品
『 日 本 英 雄 伝 』
いまのまさし
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姉でもある最高神・アマテラスに誤解を受け、神の国タカマガハラか
ら、アシハラの中つ国に追われた若き猛神スサノオは、再び神として復
活すべく、伝説の悪蛇ヤマタノオロチを探し求め、苦難の旅を続けてい
た。しかし、あるとき、死の大王ヨモツカミの策謀によって、死者の世
界・根の国の迷宮に落ち込むこととなってしまった。君は、英雄スサノ
オとなって、この迷宮を脱出し、中つ国を平定しなければならない。
ゲームをスタートしますか?
P!
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「ナオシ、ナオちゃん。朝よ。八時よ。」
母親の声に、直志は目を覚ました。
がばと跳ね起きる。
「なんだと! 今日は七時に起こせといったろうが。」
「起こしたのよ。でも、もう少し寝るって言って、また寝ちゃったの
よ。」
「ふざけるな。起こせと言ったら、ちゃんと起こすんだよ。」
直志はパジャマ代わりのトレーナーを頭から脱いで母親に投げつけ
た。
「ごめんなさいね。なにかやることがあったの?」
「うるさい。関係ないだろ。早く出てけよ。」
「ゴメンね。朝ご飯出来てるからね。下に来て。」
「いらない。もう食ってるひまなんか、ないだろっ。」
直志は、プラスチック製のくずかごを、部屋から出ていこうとする母
親の後ろ姿に投げつけた。
彼はひどく腹を立てていた。ただ、それは本当は自分自身に対する腹
立ちだった。
(俺ともあろうものが、こんな大事な日に寝坊をするなんて。)
直志は学生服に着替えると、部屋のドアに鍵をかけてから、机の鍵を
開けた。
一番下の引き出しの中からタオルにくるんだあれを取り出すと、バッ
クパックの底に入れる。さらに一昨日隣町の量販店で買ってきたペラペ
ラの安物のハーフコートと、ナイキのキャップを放り込む。
バックパックのストラップを片方の肩に掛けた。
いつものように、登校しなくてはならない。今日はとりわけ平凡に。
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どちらに進みますか?
1.北 2.南 3.東 4.西
P!
行き止まりです。戻りますか?
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日本史の授業はたいくつだった。
今時分まだ奈良時代では、来年三月までに、とうてい教科書は終わら
ないだろう。直志には、教師がだらだらとしゃべっているのが気に入ら
ない。
歴史は暗記科目なのだし、もっとポイントを押さえて、わかりやすく
やって欲しい。だいたいこの教師は、歴史年表の暗記すら出来ていない
のだ。よく間違う。ようするにおおざっぱなのだ。しかし、それで間違
った年号を覚えさせられたら、生徒はたまったものではない。
「奈良時代の文化の特徴として、一番重要なのは、本が書かれるよう
になったということなんだな。何か知ってるか。」
「げんじものがたり?」
(あほ。『源氏』は平安だろうが。)
「イイ線行ったが、ちょいハズレ。『古事記』『日本書紀』『万葉
集』といったところだ。もちろん、これ以前にもあったはずだが、この
辺ではじめて本格的な書物が生まれてきた。
「『古事記』『日本書紀』は、ほとんど同じような内容が書かれてい
るんだ。いわば歴史の本の第一号みたいなもんだな。初めの方は神話か
ら始まっている。
「最初に生まれた神様は、イザナギとイザナミというカップルの神様
で、この二人が日本を作ったと……」
(違う!)
直志は、おもわず声をあげてしまった。
「違います! 記紀では、初めの神はアメノミナカヌシノカミで、続
いてタカミムスヒノカミとカムムスヒノカミが生まれ、次にウマシアシ
カビヒコジノカミ……」
「あ、あ、わかった、わかった。そうだったかもしれん。」
教師は両手を合わせてから、汗を拭く仕草をした。
クラスにどっと笑いが湧いた。
「さすが、『血風・神国日本英雄伝』オタク!!」
誰かが叫ぶと、さらに笑いが爆発した。
直志はおもわず下を向いた。顔が熱くなる感じがした。
(ばかやろう! 俺の知識はそんな低級なテレビゲームから得たんじ
ゃ無い! 教師もクラスの奴らも、みんなC級の下層民ばかりだ。記紀
を読んだこともないこんな奴らに、何で俺が笑われなきゃならないん
だ!)
「え、なに? そんなゲームが流行ってるの? でも、まあ、それもイ
イとこを突いてるのかもしれないね。
「日本のも含めて、神話というのは通過儀礼、つまり、えーと、成人
になるための儀式や、ある地位を受け継ぐための儀式などを、お話の形
で表したものが多いとされているんだ。
「現代社会では、そういった儀式や風習がどんどん廃れてきて、子供
が大人になるケジメがつきにくくなってきている。案外そういうゲーム
が、疑似体験的に、君たちの通過儀礼の代わりを果たしているのかもし
れないよ。話が脱線したついだが、ユングという心理学者の説によれ
ば……」
直志には、もうこんなくだらないオシャベリを聞く気にはならなかっ
た。
かっかとした頭を沈めようと、「今日の計画」をもう一度順を追って
なぞってみようとした。しかし、興奮した頭に浮かんでくるのは、A級
支配階層であるべき自分が、C級の群の中に放り込まれている理不尽へ
の、止めどない怒りの感情ばかりだった。
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亡者が話しかけてきました。
話に応じますか?
1.応じる 2.無視する
P!
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「掃除当番だろ」という声を無視して、直志は教室を飛び出し、自転
車にまたがると校門を駆け抜けた。
とりあえずは自宅の方向へ走る。
しばらくして、誰も近くに知り合いがいそうもないことを確認する
と、急転回して人通りの少ない路地に飛び込む。さらにペダルを踏み込
んで路地から路地へと進んで行った。
日曜日に確認したコースである。
いったん自転車を止めると、学生服の上着を脱いで、ハーフコートに
着替えキャップをかぶった。用意してあった軍手もはめた。
再び自転車をこぎ始めると、予定通り幹線道路がすぐだった。
人間というのは、あらかじめ不平等に出来ている、というのが直志の
考えだった。
勝てる能力の有る人間と、無い人間。
優れた能力を持った人間は、他の人間の上に立って支配し、世界史を
動かしていくべき運命を持っている。直志はこの階層を仮にA級と呼ん
でいた。
自分の頭で考えることが出来ず、年中くだらない欲望を刹那的に満た
している連中もいる。こいつらはC級だ。こいつらは言われたとおりに
仕事をしてくれさえすればいい。そして事実、世の中にいる大半のバカ
な人間は、秩序を守って従順に仕事をしている。
Cの中でも、ちょっと頭がいい奴がB級で、彼らはA級から出された
指示をC級に実行させる管理職の役目を果たしている。そこら辺にゴロ
ゴロいるくだらない政治家や実業家などがこれだ。
そして、それ以外の「アウト・オブ・カースト」。
世の中にいても、何も生み出すことのない奴ら。
社会の慈悲だけで生かさせてもらっている奴ら。
お荷物。
ゴミ。
年寄り、障害者、ホームレス、子供。
子供? もちろん、子供はしかたがない。これは将来の生産性を期待
できるのだから、まあとりあえず準C級とでも言っておこうか。
直志は自分はA級でしかあり得ないと感じる。
特別に勉強をしなくたって成績が落ちることはない。みんなが難しい
という本だって読みこなすことが出来る。当然、支配する側に立つべき
人間なのだ。
おとなは、福祉だとか自由平等とか言っているけれど、それは建前で
しかない。新聞やテレビのニュースをちょっと見ていればすぐわかるこ
とだ。
この世界は弱肉強食に出来ているのだ。
勝つ力のある強いものが、弱いものを従属させ支配するのだ。
それが不満なら、力をつけて強くなればいいのだ。弱いものには何を
主張する権利もない。弱い奴は永遠にいじめ続けられてもしかたないの
だ。
……イジメ? それは……。
直志は、ふとよみがえりそうになった自分がイジメにあっていた中学
時代の記憶を、無理やりに心の奥に押し返した。
しかし、と直志は考える。
こんな風にC級の中に埋没させられていると、ときどき、本当に自分
がA級なのか不安になってくる。
まわりの奴が、直志のことを理解できないのは仕方ないとしても、少
なくとも自分が自分に確信を持っていなくてはならない。
そのためには、自分自身に対して、自分がAであることを証明する必
要があるのだ。
幹線道路の歩道をしばらく走っていくと、やがて市境を二つ越えると
ころまでやって来た。
このあたりでよいだろうと判断して、直志は住宅街とおぼしき方向に
自転車を向けた。
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どちらに進みますか?
1.北 2.南 3.東 4.西
P!
家が建ち並ぶ村があります。
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静かな住宅街の、なるべく人気の少なそうな道を選びながら、ゆっく
りと自転車を走らす。目だけは家々の表札を見ている。
〈多田仁太朗、ハナ〉
それが目に入ったのは、もちろん偶然にすぎない。
小さな古びた表札だった。
しかし、これが自分の目指していた家だと、直志は直感した。
歴史上の偉人や英雄は、必ず何かしらの苦難を乗り越えて、成長し認
められていく。
だから直志も、何かやらなくてはならないのだ。
C級の奴らにとっては、大騒ぎするような大ゴトかもしれないが、A
級の自分にとっては何でもないことのはずだ。
世の中の何の役にも立っていない「アウト・オブ・カースト」をひね
りつぶすことくらいは。
用心のため、二区画くらい走って、マンションの陰に自転車を止め
た。
何気ないフリをしながら、今来た道を戻る。なぜか、とてつもなく遠
い距離のような気がする。出来れば、永久にたどり着けない方が……。
直志は弱気になる自分を叱りつけた。
決めたことは何でもやる、それこそがA級たる資格なのだ。
バックパックを胸の前に抱えるように持ち変えると、ファスナーを開
けて、底の方に手を入れ、周りから見えないように気をつけながら、包
丁を包んでいたタオルをそっと開き、柄をしっかりと握りしめた。
気づけばもう「多田仁太朗家」の前だった。
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静まり返った家です。
入ってみますか?
1.入る 2.入らない
P!
小鬼が出てきました。
闘いますか?
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いかにも老人の名前だ。
しかも表札は二人だけ。
この名前を見つめて、直志は何度か口の中でつぶやいてみた。
心臓が破裂するかと思うくらい、激しく打った。
ふるえる左手で、玄関の引き戸を開く。
「……、こ、こんにちは。」
はあい、という声が家の奥から帰ってきて、どたどた、という感じ
で、太った老婆が現れた。
「はい、なんでしょう。」
「……、じんたろう、さん、は、いますか。」
老婆はいぶかしそうに直志を見た。
「いえ、あいにく、出かけてるんですけど。」
ひとりだ! 今ならひとりしかいない。直志の動悸はさらに一段、激
しさを増した。
「あ、あの。」
次の瞬間、ばっ、と、直志の右手がバックパックの中から飛び出し
た。
包丁の刃が鈍い光を放つ。
「ぎゃ」
包丁が相手のどこかの肉を切り裂く感じが、直志の手のひらに伝わっ
た。
「きゃー、助けてー。」
老婆はへたり込みながら、驚くほど大きな声をあげた。
続いて、家の奥から軽やかな足音がして、外出着姿の中年の女が現れ
た。
「おかあさん? どうしたの……。きゃあ、泥棒! 泥棒! 誰かー!
泥棒よー!」
直志は突然現れた女に驚愕した。
なんだ? これはなんなんだ?
次に気づいたときには、直志はすでに家の玄関を飛び出し、街路を駆
けだしていた。
走っている自分に、道行く人の視線が集まっていた。
ふと見ると、右手はまだ強く包丁を握りしめていた。手を開こうとし
ても、手の筋肉は全くいうことをきかなかった。ハーフコートに血の跡
が転々と着いているのもわかった。
こんなところを走っていては絶対マズイ。
その時、目の前に公園が見えた。あそこだ。直志は低い柵を乗り越え
て中に飛び込んだ。
初めから目を付けていた小さなコンクリート製の小屋に近づいた。ト
イレだった。直志はためらわず中に入ると、個室に飛び込み錠をかけ
た。
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無人の家です。
周囲に鬼が集まってきました。
1.出ていって闘う 2.何もせずやり過ごす
P!
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何が起こったのだろう。
ひとりじゃなかった。あのババア嘘をつきやがった。
あれは娘か?
直志は息を弾ませながら、うかつさにやっと気づき、自分を呪った。
「仁太朗」は確かに不在だったが、他に来客があったのだ。
そんなことは、玄関の履き物を見てさえいれば、容易に判断できたこ
となのに。Aの自分にはあるまじき失敗だった。
急に力が抜けて、直志はへたへたと、汚物がこびりついた大便器の隣
に座り込んでいった。
遠くでパトカーのサイレンが聞こえていた。いや、救急車かもしれな
い。
時間の感覚が全然ない。
トイレの外に、緊張した人の声が、いくつも近づいてきた。
「植え込みにも気を付けろ。間違いなくこの近くだ。」
「あー、もしもし、現在、近隣の公園を捜索中……」
「なんだ、ここは。トイレか。」
堅く重たい足音がした。
ノブが乱暴に引かれた。
「あ、閉まってるぞ。もしもし! 誰か入ってますか? 警察です。誰
かいたら答えて下さい。」
「ちょっとおかしい。気を付けろ。」
「もしもし、いないんですか?」
「かまわん、ちょっと上からのぞいて見ろ。それ、持ち上げるぞ。」
「よし……」
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・・・・
GAME OVER
GAME OVER
GAME OVER
GAME OVER
・・・・
リセットしますか?
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― 了 ―
(初出「月の魔法」38号)
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- ゆきだるまの短歌集
- ゆきだるま
- 記録番号:00000014
- 記録日時:100年10月14日(土)00時01分22秒
2000年星街文化祭提出作品 「短歌集」
貧しきは 時に我が身を 委ぬるを
悪しと思わぬ その心かな 1989.10.22
アルバムに 写る我が身は 影ばかり
今の我が身と 何故に重なる (改作)2000,10,09
この次は いつの日啼くか 風見鶏
今はひたすら 過去を見つめて 1998,06,16
時刻む 事を忘れた 古時計
時を重ねた 心忘れず 2000,9,20
とうさまの 背なにおぶさる 帰り道
肩がさえぎる 夕暮れの風 1997,06,??
かあさまの ほおの温もり おぼえつつ
風邪の床にて また眠りにつく 1997,06,??
敬まれど 称えられど 尽くされど
その日限りの 心悲しき 2000,09,15
本当は いつも思って いるけれど
ちょっと言えない 今日でなければ 2000,09,15
鉄の路に 耳を押し当て 聞く音は
軽き足取り 街のステップ 2000,09,19
着飾りて スポット浴びて 語る君
真の姿は 何処にありや 2000,09,19
大あくび 少しだるくて 心地よく
その心地さえ 真か夢か 2000,9,20
ゆきだるま
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- 詩 : 『柿』
- ゆきだるま
- 記録番号:00000013
- 記録日時:100年 9月 8日(金)05時02分34秒
「 柿 」
私の赤は秋の柿
夕日が照らす赤い顔
とがった顔は甘柿さん
キツネのようなお顔です
ずるがしこそうに見えるけど
決して化けたり致しません
子ぎつねそっと抱くように
ほんのり優しい甘さです
まあるい顔は渋柿さん
タヌキのようなお顔です
優しいお顔をしていても
食べるといつもだまされる
けれどもお酒を飲ませると
とってもとっても甘くなる
私の秋は柿の味
私の好きな秋の顔
1999,10,27 ゆきだるま
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- 訂正
- Junk-Oh
- 記録番号:00000012
- 記録日時:100年 6月11日(日)20時51分04秒
恥ずかしながら、短歌連作『あいに』に誤字がありました。
4首目の「驕」は「奢」の間違いです。
お詫びして、訂正します。
いまのまさし
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- 短歌:『あいに』
- Junk-Oh
- WWW極地
- 記録番号:00000011
- 記録日時:100年 6月 4日(日)23時41分19秒
『 あ い に 』 (短歌7首)
いまのまさし
満員の虚のそれぞれを埋めながら歌は降り積むライブハウスに
愛してる愛しているよと言う人が欲しかったりする夜だったりして
セスナ機がどこかで飛んでる死にたくて死にたくて死にたくて午後二時二十分
ともかくもあと一日は生きてみよう明日は驕(おご)りの約束だから
迷宮の壁の暗号解き難く何度もなぞってみる「ナ・ン・ト・ナ・ク」
人間は誤解の海に浮く孤島 聴け海渡る晴れ間の歌を
* * *
梅雨空のぼくと夕立ち降る君と明日はいっしょに虹をみません?
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